みなさん、こんにちは。やっこです。
今回は『「オバサン」はなぜ嫌われるか(田中ひかる)』を読んで感じたことを
まとめたいと思います。
この本は、ざっくりいうとジェンダーがテーマです。
「女性の価値は<生殖のリミット>で決まる」という歴史などを様々な角度から記している本なのですが、<生殖のリミット>という言葉に違和感を持った、というのが一番の感想です。
そして私はどちらかというとこの本のテーマの対象者であり、その視点から読み進めてしまうと過去の歴史と現在、そして現実を突きつけられ、不快にしか感じないと感情的に終わってしまう本でした。
しかしそれだけでは実にならないので、私なりにこの本の深みを考えていきたいと思います。
<生殖のリミット>で女性の価値は決まる?
「<生殖のリミット>があるから女性は若いほうがいい」という価値観を男女問わずもち、子供が産めない年齢になると女性は存在価値がないとされ、男女での二重基準、男女別定年制の法律や裁判での男女差別が認められてしまうような歴史
そしてそれは若ければ若いほど良いとする考えの始まりであり、その名残は2021年の今、私たちの思考に残り続けています。
男性は外で仕事、女性は家庭を守るという男女での役割分担が普通とされていた時代から、女性の社会進出により人生の選択も多様化してきた現代ですが、30歳になる手前には「結婚」の文字が頭の中に居座りますし、30歳を過ぎれば子供を産みたい人でも産まないと選択した人でも無言のプレッシャーを感じる人は少なくないと思います。結婚をしていなければ周りが気を使い、子供がいなければ、なぜ?と親から言われたりもして、「リミット」というものを感じながら歳を重ねなくてはなりません。
以前に友人から言われたことがあります。
「長く一緒にいる相手がいるのに結婚も出産もしない意味がわからない。私はしたくても相手がいないのに・・・。」という、なかなかパンチの聞いた言葉です。
友人は子供がほしく、幸せな家庭を築きたいとずっと思っていましたが、なかなか良縁に巡り合えていなかったときの言葉です。
友人も<生殖のリミット>を感じての焦りからだとその気持ちも理解できたので、何も言えない自分がいたのを覚えています。
この<生殖のリミット>ですが、昔と比べればだいぶ変わっているのでは?と思い、
調べてみました。この本が発行された2011年と2019年現在を比べてみます。
|
2009年出生数(人) |
2019年出生数(人) |
総数 |
1,070,035 |
865,234 |
40歳以上 |
31,270 |
50,840 |
全体の割合 |
2.9% |
5.9% |
40歳以上(第1子出産) |
ー |
18,378 |
初産の平均年齢 |
29.4歳 |
30.7歳 |
厚生労働省の調査データを簡単な表にしてみました。
2009年に40歳以上で出産した人は全体の2.9%、2019年には5.9%です。
そして初産の平均年齢は、2009年は29.4歳、2019年は30.7歳。
40歳以上で第1子を出産したデータが2009年はなかったので、あくまで推測ですが、おそらく増えているだろうと思います。
最近では有名人の40歳以上での出産は、浜崎あゆみさん41歳、滝川クリステルさん42歳、華原朋美さん45歳、坂上みきさん53歳と高齢出産で話題になった人も多くいらっしゃいます。
年齢が上がれば、妊娠率が下がり、流産率が上がり、合併症などのリスクももちろんあります。母子の健康を考えると若いときに出産したほうがいいでしょう。様々な背景、状況がありますので、単純に年齢が上がっているというのを良いこととは言えませんが、<生殖のリミット>だけで判断するとしたら確実に伸びています。
しかし、<生殖のリミット>が伸びているから、女性の価値も上がったよね!と単純に喜べない気もしています。
女性の価値を<生殖のリミット>で判断する歴史が私たちの思考に残っている現代は、昔以上に苦悩に感じる時代だと思います。
<生殖のリミット>が女性の価値だとすれば、子供を産まない選択をした人は女性ではないということになってしまいます。しかし、男性が子供を作らないとした場合、男性でなくなるわけではありません。その背景には、やはり男は仕事、女性は家庭という「家父長制」の日本の歴史があるからです。ですが、この過去にあった男女ごとの当たり前を切り離していくのが今の時代です。でもこの当たり前を当たり前のように生きてきた世代と、変化を感じながら生きてきた世代、そしてそれを知らない世代がひとつになっている現代が、ますます女性にプレッシャーを与えているように感じます。
女性は<生殖のリミット>をわかりながらも社会進出をし、人生の中で結婚・出産、そして仕事とのバランスを考えなくてはなりません。
このバランスを取ろうとする行為は自分の理想どおりになることは難しく、バランスを取ろうとするとストレスを感じることもあります。
また、どれかを優先するとどれかを諦めるという選択にもなり得ます。
そう自分で決めたとしても世間が認めてくれないこともあります。
一見、選択の幅が広がったことにより女性が生きやすい世の中になったと思いがちですが、<生殖のリミット>で判断されるという思考が残り続ける限り、女性が解放されることはないかもしれません。
<生殖のリミット>はあくまで「子供を産む」リミットであり、女性であるリミットでも、もちろん人としてのリミットでもありません。
それを混同してしまうような思考を解き放たなければ、ほんとうの意味での人生の選択はできず、ただただ歳を重ねることに追われる人生になってしまうと思います。
個性を尊重する、過去の常識や価値観にとらわれない、わたしたちは思考のシフトチェンジが必要です。
つづきは次回に。